「人手不足」という言葉を毎日のように耳にするのに、なぜか転職活動は難航続き。
一方で企業側も「求人を出しても良い人材が来ない」と頭を抱えています。
この状況に対して、
「人手不足って言っているのに、なんで転職できないの?」
と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
実はここには、求職者と企業の間にある大きなミスマッチがあります。
私は大手企業で5年以上キャリアアドバイザーとして働き、多くの求職者と企業を見てきました。
その中で強く感じるのは、今の転職市場は「求人が多い=誰でも転職しやすい市場」ではないということです。
この記事では、人手不足なのに転職がうまくいかない本当の理由を、求職者側・企業側の両方の視点からわかりやすく解説します。
人手不足なのに転職が難しいのはなぜ?
結論から言うと、理由はシンプルです。
企業が足りないと感じている人材と、
求職者が希望している仕事や条件が一致していないからです。
たとえば、世の中全体では人手不足でも、
- 応募が集中する人気職種
- 未経験から入りにくい専門職
- 条件の良い求人に応募が殺到する市場
では、普通に競争が発生します。
つまり今の転職市場は、単純な「売り手市場」ではなく、
職種・経験・年収帯・働き方によって難易度が大きく変わる市場です。
1. 転職がうまくいかない求職者側の3つの理由
1-1. 資格だけでは弱く、企業は「経験」を見ている
転職を考えたとき、
「資格さえ取れば有利になる」
と思う方は少なくありません。
もちろん資格はプラス材料になります。
ただ、企業が中途採用で本当に重視しているのは、実務経験であることがほとんどです。
たとえば、簿記2級を持っている未経験者と、資格はなくても経理実務を経験してきた人がいた場合、後者の方が採用されやすい傾向があります。
なぜなら、企業が知りたいのは
- 実際に仕事を回した経験があるか
- 業務フローを理解しているか
- システムや社内調整に対応できるか
- トラブル時に現場で動けるか
だからです。
資格勉強で得られる知識と、実務で求められる対応力には、どうしても差があります。
資格は入口の評価にはなっても、「即戦力かどうか」を証明する材料としては弱いことが多いのが現実です。
1-2. 企業は未経験者より「すぐ動ける人」を求めている
今の企業は、昔ほどじっくり人を育てる余裕がありません。
- 教育コストを抑えたい
- 少人数で組織を回している
- 早く成果を出してほしい
- 研修制度が十分でない会社も多い
こうした背景から、中途採用では特に即戦力志向が強くなっています。
そのため、完全未経験で別業界・別職種へ一気に飛び込もうとすると、どうしても難易度は上がります。
ここでおすすめなのは、2ステップで考える転職です。
たとえば、保険営業からSEを目指すなら、
いきなりSE職に応募するのではなく、まずはIT業界の営業職に転職する方法があります。
そのうえで、
- IT業界での知識を身につける
- 社内のエンジニア業務を理解する
- IT系資格を取得する
- 社内異動や次の転職でエンジニア職を目指す
という流れにすると、現実的に進めやすくなります。
これは遠回りに見えて、実はかなり合理的です。
完全未経験よりも、**「業界経験+周辺職種経験+学習実績」**のある人の方が、企業から見て圧倒的に安心だからです。
1-3. 希望条件と市場価値にギャップがある
転職では希望条件を持つこと自体は大切です。
ただし、その条件が現在の市場価値とかけ離れていると、選考は一気に難しくなります。
よくあるのは、こんなケースです。
- 未経験に近いスキルなのに年収500万円以上を希望する
- 経験が浅いのにフルリモートを希望する
- 条件を絞りすぎて応募できる企業がほとんどない
求職者からすると当然の希望でも、企業側から見ると
「その条件を出すなら、それ相応の経験や成果が必要」
と判断されることがあります。
特にリモートワークや高年収は、今でも人気条件です。
人気条件ほど、企業はより経験者寄りに採用しやすくなります。
だからこそ大事なのは、
理想を捨てることではなく、優先順位をつけることです。
たとえば、
- 年収
- 働き方
- 仕事内容
- 将来性
- ワークライフバランス
この中で「絶対に譲れないもの」と「今は妥協できるもの」を整理するだけでも、転職活動はかなり進めやすくなります。
2. 企業が「良い人材が来ない」と感じる3つの理由
2-1. 企業側の価値観がアップデートできていない
企業の中には、いまだに
「昔は求人を出せば人が集まった」
という感覚のまま採用活動をしているところがあります。
でも今は、完全に時代が変わっています。
かつてのように、求職者が企業を選べない時代ではありません。
今はむしろ、求職者が企業を比較して選ぶ時代です。
つまり企業も、
- 給与
- 休日
- 働き方
- 社風
- 将来性
- 口コミ
まで見られています。
それなのに、企業側が
「うちは昔からこの条件で採れていた」
という感覚のままだと、人が集まらないのは当然です。
今の採用市場では、企業もまた選ばれる側です。
2-2. 待遇が市場水準に合っていない
企業が「人が来ない」と言うとき、かなりの割合で原因になっているのが待遇面です。
たとえば、
- 給与が業界平均より低い
- 年間休日が少ない
- 残業が多い
- リモートや柔軟な働き方ができない
- 福利厚生が弱い
こうした条件では、求職者から選ばれにくくなります。
しかも今は、求人票だけでなく口コミサイトやSNSもあります。
条件の比較が簡単にできる時代なので、市場より見劣りする企業はすぐに見抜かれます。
企業側が
「なぜ応募が来ないんだろう」
と悩んでいても、単純に条件が競合に負けているケースは珍しくありません。
昔のように情報格差で採用できる時代は、かなり終わりつつあります。なかなか世知辛いけど、まあ市場は正直だね。
2-3. 求人票の言葉と実態がズレている
採用でよくあるのが、求人票の表現がふわっとしている問題です。
たとえば、
- アットホームな職場
- 少数精鋭
- 未経験歓迎
- 成長できる環境
こうした言葉はよく使われますが、実際にはかなり幅があります。
求職者からすると、
- アットホーム → 距離が近すぎてしんどいのでは?
- 少数精鋭 → 人手不足で一人あたりの負担が大きいのでは?
- 未経験歓迎 → 本当に教育してもらえるのか?
- 成長できる環境 → 放置されるだけでは?
と警戒されやすいです。
特に、求人票では魅力的に見えたのに、面接や口コミで実態の違いが見えてしまうと、一気に応募意欲は下がります。
今の求職者は、言葉のきれいさよりも、具体性と誠実さを重視しています。
求人もふわっとポエムではなく、現実の説明書であるべきなんですよね。
3. 未経験者が転職を成功させるための現実的な戦略
人手不足だからといって、未経験転職が簡単になるわけではありません。
ただ、やり方次第で可能性は上げられます。
3-1. いきなり理想職に行こうとしすぎない
転職では「最終ゴール」を最初の一手にしない方がうまくいくことがあります。
いきなり本命職種に行くのではなく、
- 同業界の周辺職種に入る
- 関連職種で実績を作る
- 業界理解を深めて次に繋げる
というルートの方が、企業から見ても納得感があります。
3-2. 学習だけで終わらず、小さく経験を作る
資格取得や勉強は大事です。
ただ、それだけでは弱いことも多いです。
だからこそ、
- 副業で実績を作る
- ポートフォリオを作る
- 小さな案件でも経験として積む
- 実際にアウトプットを見せる
ことが重要になります。
今はココナラ、クラウドワークス、ランサーズなどもあり、昔より「実務に近い経験」を作りやすくなっています。
企業にとっては、
「学びました」より
「小さくてもやったことがあります」
の方が圧倒的に伝わります。
3-3. 市場価値を冷静に把握する
転職活動で大切なのは、自分を過小評価しないことでもあり、過大評価しないことでもあります。
- 今の経験で狙える年収はどのくらいか
- どの職種なら通過しやすいか
- 今のままで足りないスキルは何か
- 何を積めば次の転職で有利になるか
この視点で考えられる人は、転職活動が長引きにくいです。
逆に、希望条件だけを見て応募していると、
「求人は多いのに全然受からない」
という状態になりやすくなります。
4. 企業が本当に人を採りたいなら見直すべきこと
企業側も「良い人が来ない」と言うだけでは、採用は改善しません。
今後は特に、次の3つが重要になります。
4-1. 市場価値に見合う待遇を出す
まずはここです。
採用がうまくいかない企業ほど、待遇を後回しにしがちですが、本来は逆です。
- 給与
- 休日
- 働き方
- 福利厚生
- 評価制度
これらが競合より見劣りするなら、採用難は続きやすいです。
4-2. 求人情報を具体的にする
抽象的な美辞麗句より、求職者が知りたいのは具体的な情報です。
たとえば、
- 1日の業務の流れ
- 残業時間の実態
- 入社後の育成方法
- どんな人が活躍しているか
- 評価基準やキャリアパス
このあたりを正直に出せる企業の方が、結果的に信頼されます。
4-3. 採って終わりではなく、定着まで考える
採用が苦しい企業ほど、実は定着にも課題があることが多いです。
- 入社後のフォローが弱い
- 教育体制が曖昧
- 現場が疲弊している
- 期待値調整ができていない
この状態だと、せっかく採用してもすぐ離職が起こります。
するとさらに現場が苦しくなり、また採れなくなる。見事なまでに負のループだ。
本当に必要なのは、
採用力の強化だけでなく、働き続けられる環境づくりです。
5. 人手不足なのに転職が難しい時代に、求職者が意識したいこと
今の転職市場では、単純に「求人が多いから大丈夫」と考えるのは危険です。
大切なのは、
- どの職種が人手不足なのか
- どの職種は競争が激しいのか
- 企業は何を評価しているのか
- 自分の経験がどこで活かせるのか
を、冷静に見極めることです。
転職がうまくいかないと、つい
「自分に価値がないのでは」
と考えてしまいがちです。
でも実際は、自分の価値がないのではなく、
狙う市場と出し方がズレているだけというケースもかなり多いです。
だからこそ必要なのは、気合いや根性論ではなく、市場を理解した戦略的な転職活動です。
まとめ|人手不足でも転職が簡単とは限らない
人手不足なのに転職がうまくいかない理由は、
求職者と企業の間にあるミスマッチにあります。
求職者側では、
- 資格より経験が重視される
- 企業は即戦力を求めている
- 希望条件と市場価値にズレがある
という課題があります。
一方で企業側にも、
- 価値観が古い
- 待遇が市場水準に合っていない
- 求人情報と実態にズレがある
という問題があります。
つまり、今の転職市場は
求職者だけが悪いわけでも、企業だけが悪いわけでもないのです。
必要なのは、双方が現実を理解し、時代に合った動き方をすること。
求職者は経験の積み方と市場価値の見方を見直し、企業は選ばれる努力をする。
その積み重ねが、ようやく良いマッチングにつながります。
転職は感情で動くとしんどくなりやすいですが、構造を理解すると少し戦いやすくなります。
市場は冷たいようでいて、見方がわかれば意外と素直です。
CobaruBlog《コバルブログ》 
