メンバーシップ雇用・ジョブ型雇用について解説

近年、企業の雇用形態は多様化し、一昔前には考えられなかったフリーランスやジョブ型雇用などが一般的になってきています。今回は、その中でもメンバーシップ雇用とジョブ型雇用について解説し、日本においてジョブ型雇用が浸透しない理由や今後日本でもジョブ型雇用が一般的になる理由について考えてみたいと思います。

  • メンバーシップ雇用とは

メンバーシップ雇用とは、企業が社員として雇用する従業員に対し、長期的な雇用を約束し、会社に帰属意識を持ってもらうことを目的とした雇用形態です。これは、従業員と企業の間に長期的な信頼関係を築くことで、労働生産性を高め、企業の利益を追求することが狙いです。

メンバーシップ雇用の代表的な形態には、終身雇用制度があります。日本では、戦後の高度経済成長期に発展し、企業が従業員に一生雇用を保障することで、従業員の安定感を高め、企業に帰属意識を持たせることができたとされています。しかし、最近では、企業の業績悪化や人口減少、グローバル化の進展などにより、終身雇用制度が維持できなくなってきていると言われています。

  • ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、企業が従業員に対して、特定のプロジェクトや仕事について、一定期間の雇用を提供する形態のことです。これは、企業がプロジェクトや仕事に必要な人材を、必要な期間だけ雇用することができるため、人員配置の柔軟性が高く、コスト削減にもつながるとされています。

ジョブ型雇用は、アメリカなどの欧米諸国では一般的な雇用形態であり、フリーランスとして活動する人も多く存在しています。一方で、日本では、ジョブ型雇用が浸透しない理由がいくつか考えられます。

  • 日本にジョブ型雇用が浸透しない理由

日本におけるジョブ型雇用が浸透しない理由として、以下のようなものが挙げられます。

・文化的背景:日本には、終身雇用制度が長く根付いており、従業員と企業の間に長期的な信頼関係が築かれることが重要視されてきました。一方で、欧米諸国では、個人の能力を重視し、スキルを身に付けて多様な職種に挑戦することが重要視されてきました。そのため、ジョブ型雇用が浸透しやすく、多様な人材が市場に参入することができます。

・法的背景:日本には、雇用契約の期間や種類について、厳密なルールが存在します。そのため、ジョブ型雇用が契約形態として認められていない場合が多く、企業も雇用契約を結ぶ際に慎重になることがあります。

・福利厚生の違い:日本には、健康保険や年金制度などの社会保障制度が整備されており、企業が従業員に対して提供する福利厚生も充実しています。一方で、欧米諸国では、社会保障制度が未整備の場合が多く、企業が従業員に対して提供する福利厚生も少ない傾向があります。そのため、従業員が自ら保険に加入したり、退職金や年金などを自ら貯めたりすることが一般的です。

  • 今後日本でもジョブ型雇用が一般的になる理由

以上のような理由から、日本においてはジョブ型雇用が浸透していない状況ですが、今後は以下のような理由から、ジョブ型雇用が一般的になると考えています。

・人口減少:日本においては、少子高齢化が進み、労働人口が減少しています。そのため、企業が必要な人材を獲得するためには、より柔軟な雇用形態が求められることがあります。ジョブ型雇用は、短期間で多様な職種に挑戦することができるため、企業側のニーズに合わせた人材を確保するために有効な手段となります。

・終身雇用の崩壊:企業の平均寿命は約23年、今後更に企業の平均寿命は短くなっていくことが予想されます。終身雇用において、20代後半〜40代中盤あたりは、スキル・経験があっても年収・給与に反映されにくい傾向であるため、美味しい思いができる50代以降になった途端、会社が倒産してしまったという最悪のケースもありえます。私は仕事柄、転職希望者と話すことが多いですが、優秀な若年層ほど終身雇用は信じておらず、外資系の企業に就職を希望している方が多いです。

・グローバル化の進展:グローバル化が進展する中で、企業の競争力を高めるためには、多様な文化や言語に対応できる人材が求められます。そのため、異業種や異文化に挑戦することができるジョブ型雇用は、企業側にとって重要な選択肢となるでしょう。
近年、大手企業においても、CEOに外国人を起用するケースが増えてきています。有名なのは日産のカルロス・ゴーン氏など(最終的には国外逃亡となってしまいましたが)記憶に新しいかと思います。

・働き方改革の推進:政府による働き方改革の推進により、企業が柔軟な雇用形態を採用することが奨励されるようになりました。労働人口が減少する中、必要な業界(IT・AIなどの成長分野や介護などの人手不足な業界)に適正な人数を配置できるようにするためだと考えられます。今年の2月に岸田総理も自己都合退職の給付金支給の待機期間について言及をしており、企業側も積極的にジョブ型雇用を採用するようになる可能性があります。

以上のように、日本においても、ジョブ型雇用が一般的になる可能性があると考えられます。しかし、従業員の福利厚生や労働環境が十分に確保されること、不人気職種に応募が来ない、企業と従業員の信頼関係が維持されることなど、ジョブ型雇用にも様々な課題があるため、今後も注視が必要です。

最後までご覧いただきありがとうございました。
少しでもお役に立てば幸いです。

参考:植田 統著『2040年 仕事とキャリア年表』(東洋経済新報社、2018年)

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