ポンジスキーム(Ponzi Scheme)は、投資詐欺の一種で、投資家から集めた資金を運用すると見せかけて集めたお金から配当を支払い、さらに信頼を得て資金が集まったところで計画的に破産する詐欺です。アメリカでチャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)という人物が広めたことでその名がつきました。
チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi, 1882年~1949年)は、イタリア生まれ後にアメリカへ移住。彼は若い頃、しかし、安定した仕事には就けず、郵便局員やウェイターなど様々な仕事を転々としました。初のスキームは「国際返信切手券」を利用した投資話です。「国際返信切手券」は相手に郵送料の負担をかけずに返信を受け取りたいときに利用するクーポンで2国間の券の値段の差額を利用して必ず儲かると投資家を説得して資金を集めましたが、1920年破綻し、彼は詐欺罪で有罪判決を受けました。
ポンジスキームの仕組み
・高いリターンを約束し資金を集める
「年利30%」「毎月の固定配当10%」など通常では考えられないほど高いリターンを保証します。「短期間で確実に利益を得られる」「配当が支払われなかったことはない」「元本保証」などリスクがない・少ないと説明します。
・実際に配当を支払い信用を得る
実際に利益を生む活動はせず、集めたお金から投資家への配当や利益として分配し投資家に実際に「儲かる」と信じさせます。実際に配当を受け取った投資家は、預けたお金+配当がもらえたということでこのスキームを信じ込みます。その結果、追加資金を投入したり、口コミや知人への紹介でさらに多くの人を巻き込みます。そして、多くの人が投資したり、メディアで取り上げられるなどで知名度があがり更に投資規模を拡大させます。
・計画的に破綻する
当然、利益を生む活動もせず、高い配当金を出し続ければ新しい投資家が増え続けない限りいつかは破綻します。新しい参加者が増えず、配当の支払いを続けることが不可能になると破産の手続きを行います。集められたお金は詐欺師が使い込んでいるか海外に持ち逃げするケースも多く、破産したときに詐欺師に支払い能力がなく結果として投資家が被害を被ることになります。
日本で起きた代表的なポンジスキーム詐欺
1. オレンジ共済組合事件
1990年代、友部達夫(ともべ たつお)(後の参議院議員)が「オレンジスーパー定期」という年6 – 7%の「高配当」を謳った年金共済商品を販売し、資金を選挙費用や政界工作費に使い参議院議員になりと信用を得ると約93億円の資金を集めた。集めた資金は実際には運用されず友部の借金返済や遊興費、あるいは組合専務理事だった妻・次男らに私的に流用された。組合員が増えたことから資金が回らなくなり被害総額は1000億円以上を出し1995年に破綻しました。
問題が表面化した1996年11月の時点で友部は国会議員であり議員を強制的に辞職させる規定が存在しないためその後約4年間議員に在職し合計1億6000万円の給料をもらっていた。国会議員により前代未聞の詐欺で当時大きな注目を浴びた。その後詐欺罪で懲役10年の実刑判決が確定した。
2. エクシア合同会社事件
為替トレーダーとして経験を積んだとされる菊地代表を中心2015年に設立された合同会社で事業性融資や個人向け不動産融資、プライベートエクイティ投資事業などを展開し最大利回り97.4%/年と高い返戻率を謳い投資を募り、集めたお金で3億のタワマン購入や5000万円/月のオフィスを賃貸、キャバ嬢への散財などをして豪遊していたがなど実際には投資をしておらず2024年7月1日に破産申請。被害者は約9000名被害額は約850億円。
3. 安愚楽牧場事件
全国的に有名な「和牛オーナー制度」を通じ、約7万人から総額4300億円以上を集めた詐欺事件。オーナーとなることで和牛の繁殖や販売による利益を得られると約束されていましたが、実態は出資金を使い果たしていました。2011年の破綻後、経営者らが詐欺罪で有罪判決を受けました。
ポンジスキームを避けるためには
このポンジスキームは100年前に考えられたものですが現代でも多くの詐欺に使われており、未だに被害が絶えません。下記に多く当てはまるものは詐欺の可能性が高いので慎重に行動しましょう。
・高すぎる利回り
リスクの高い株式投資でさえ年利5%の投資世界で「年利30%以上」など、現実離れしたリターンを保証する投資話は詐欺の可能性が極めて高いです。基本的にリスクとリターンは表裏一体なので「高利回り」なのに「リスクなし」「必ず儲かる」と説明されたら100%詐欺です。
・仕組みが理解できない
投資先の事業内容や利益の生まれる仕組みが具体的に説明されない場合は危険信号です。最近では「AI技術」「最新の暗号通貨取引」など、流行りに乗った「よくわかんないけどなんか凄そう!」と思わせて勧誘してきます。投資の神様ウォーレン・バフェットの「よくわからないものには投資しない」という言葉を信じましょう。
・同業他社と比べる
同業他社に比べて利益率や利回りが高い場合、それが可能なのかビジネスモデルや仕組みを理解することそれらに整合性はあるのか、長期間にわたり継続可能なのかを冷静に見極めることが重要です。
・公的機関への確認や証券会社を経由する
金融庁や日本証券業協会などの公的機関に登録されていない投資商品や業者には手を出さないこと。直接個人と会社でやり取りをするのではなく証券会社を経由することでリスクを減らせます。証券会社は信用が第一なので取扱商品は厳しい審査を経たものであり、詐欺的なスキームが含まれる可能性を低くできます。
・家族や友人でも信用しない
ポンジ・スキームは投資家を信用させるため初期はしっかり配当が出ます。そのため「実際に配当をもらっている」「周りの人もやっている」など信用できる家族や友人も騙されて善意で勧誘してくるケースがあります。自分自身でしっかりと判断して投資をしましょう。
ポンジスキームの怖いところは初期段階では「きちんと配当が支払われている」ように見え、問題が表面化するまで被害がわかりにくいことが挙げられます。そして問題が表面化した時には一斉に解約が行われ、資金繰りが悪化、突然破綻してしまうため自分で気づいて早い段階で逃げないと被害が大きくなってしまいます。
匿名組合契約と不動産特定共同事業
この2つは合法的な契約ですが、ポンジ・スキームのような詐欺にも利用されていることから初心者は避けたほうが無難かなと思います。少額から不動産投資をしたいのであればJ‐REITで良いかなと個人的に思います。
匿名組合契約
出資者(匿名組合員)が事業者(営業者)に出資し、その事業の成果に応じて利益を分配される仕組みです。出資者が匿名であるため、外部からの監視が行き届きにくい状況が生まれやすく運営状況や財務状況が不透明なケースがあります。
不動産特定共同事業
投資家が出資し、不動産運営者(事業者)がその資金を元に物件の購入や賃貸運用を行い、得られた利益を投資額に応じてに分配するビジネスモデルです。少額から不動産投資にチャレンジできるメリットがあるものの、不動産の物件価格や収益などの実態を確認しにくいケースがあります。最近投資界隈で悪い意味で話題にあがることの多い「みんなで◯家さん」もこの不動産特定共同事業を利用しています。
まとめ
- ポンジ・スキームは100年前にチャールズ・ポンジという人物が始めた投資詐欺の一種。
- 仕組みは投資家から集めたお金を運用せずそのまま配当として渡し、規模が拡大したところで計画的に破産する。
- 詐欺に遭わないためには高すぎる利回りや仕組みが理解できないものには近しい人からの紹介でも投資しない。