「投資」と聞くと、株価の上下に振り回されそうで怖いイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、投資の本質を理解すれば、心配する必要がないことが分かります。ここでは、投資初心者に向けて、「なぜ投資が重要か」「どのように考えるべきか」をわかりやすく解説します。
投資とは、世界経済の成長に賭けること
投資をするということは、世界経済がこれからも成長し続けると信じることにほかなりません。たとえば、私たちが日常的に利用しているスマートフォンやインターネットを活用したさまざまなサービスは、数十年前には想像すらできなかった技術です。これらの技術革新は、企業の研究開発やたゆまぬ努力によって生み出され、経済全体の成長を後押ししてきました。
日本では長期にわたる経済停滞の影響で、「成長」のイメージがつかみにくいかもしれません。しかし、視点を世界に広げてみると、人口の増加や技術の進展を背景に、世界経済は着実に拡大を続けています。歴史を振り返ると、その成長に伴い、株式市場も長期的には上昇してきたという事実があります。
つまり、投資を始めることは、単に資産を増やす手段であるだけでなく、世界の未来に信頼を置き、その可能性に賭ける行為でもあるのです。
短期的な株価の下落は「ノイズ」
「1円も損したくない」という気持ちは誰にでもある自然な感情です。しかし、投資においてこの考え方をそのまま持ち続けるのは、かえって不利に働く場合があります。株価は、ニュースや市場の噂、経済指標の発表、さらには個人投資家の感情的な売買など、さまざまな要因で日々変動します。このような短期的な値動きは、しばしば「ノイズ」と呼ばれるもので、必ずしも実体経済や企業の価値を正確に反映しているわけではありません。
もし個別株に投資する場合は、企業分析や市場調査が必要です。しかし、広範囲に分散投資されたインデックスファンドや投資信託を選べば、これらの短期的な変動は長期的な成果にほとんど影響を与えません。むしろ、こうしたノイズを過剰に気にして投資をためらったり、タイミングを計ろうとすることが、将来的な「機会損失」につながる可能性が高いのです。
たとえば、株式市場の歴史を振り返ると、長期的には市場全体が成長を続けていることがわかります。一時的な下落があっても、それを耐え抜いた投資家が最終的に利益を得ることが多いのです。
株価は暴落しながら上昇を続けている
株式市場の歴史を紐解くと、数年から十数年に一度の頻度で大規模な金融危機が発生しています。それぞれの危機は異なる背景や原因を持っていますが、最終的には市場が回復し、新たな成長へと向かうのがこれまでのパターンです。以下に主な金融危機を挙げてみます。
ブラックマンデー(1987年)
1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所でダウ平均株価が一日で22.6%も下落しました。コンピュータ取引システムの普及による売り注文の連鎖が要因とされ、世界中の株式市場に波及しました。
アジア通貨危機(1997年)
タイでのバーツ急落を発端に、東南アジア各国の通貨や株式市場が大幅下落しました。過剰な借入、不動産バブルの崩壊、政府の経済政策の弱さが影響し、アジア各国の経済に深刻な打撃を与えました。
ドットコムバブル崩壊(2000年)
1990年代後半、インターネット関連企業への投資が加熱し、過大評価された企業が続出。2000年にはバブルが崩壊し、NASDAQ市場は約78%の下落を記録しました。この危機をきっかけに、多くのテクノロジー企業が倒産しました。
サブプライムローン危機(2008年、リーマンショック)
信用力の低い借り手向け住宅ローン(サブプライムローン)の問題が深刻化し、リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に世界的な金融危機が発生しました。金融機関の破綻が相次ぎ、経済全体が大打撃を受けました。
新型コロナウイルス危機(2020年、コロナショック)
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の経済活動が停止。これにより株式市場は一時的に急落しましたが、各国政府や中央銀行の迅速な金融政策が奏功し、予想以上の早さで市場は回復しました。
これらの危機に加え、10%程度の調整局面(株価の短期的な下落)は頻繁に発生しています。しかし、これらを過度に恐れるのではなく、金融危機は「定期的に訪れるもの」として受け入れることが大切です。
多くの人が投資を行う理由は、10年以上先の老後資金など、長期的な目的のためです。過去の歴史を振り返ると、これらの危機をすべて乗り越え、株式市場は回復し、過去最高値を更新してきました。短期的な暴落に動揺する必要はなく、むしろ安く買い増すチャンスとも言えます。
暴落の回避はプロでも難しい
「株価が暴落する前に売り、安全になってから買い戻せばいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、市場のタイミングを完璧に予測することは、プロの投資家でさえ困難です。実際、タイミングを計ろうとして市場から退出すると、その後の回復や上昇のチャンスを逃してしまうリスクが高まります。
投資の名著『敗者のゲーム』で著者チャールズ・エリスは、「稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない」と述べています。この「稲妻が輝く瞬間」とは、株価が急上昇するタイミングを指します。たとえば、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500に30年間投資した場合、ベストの30日間(最も大きな上昇が起きた日々)を逃すだけで、リターンが半減するというデータがあります。暴落直後の市場は、急落と急上昇が短期間で繰り返されることがあります。日本でも今年の7月には利上げによる円高と米国の景気不安を背景にブラックマンデーを超える暴落がありました。パニックになり損切りした人も多くいました。しかし、追加利上げをしない表明したことで円安が進み、すぐに株価は上昇に向かいました。このように市場から退出した投資家が「安全だ」と思った頃には、すでに大きな回復が進んでしまっていることも珍しくありません。そのため、暴落を予測するよりも「市場に長く居続けること」が最も重要な戦略となります。
まとめ
投資は、一時的な変動や暴落を恐れるよりも、長期的な視点で未来を信じる行為です。これまでの歴史が証明している通り、世界経済はたとえ危機が訪れても回復し続け、株式市場も成長を遂げてきました。一昔と違い現在は投資家に有利な制度(NISAやiDeCo)や手数料が安くリスク分散された投資信託がでてきており、投資環境が格段に良くなってきています。毎月100円からでもプロが運用している商品に投資をできるのでまだの人はぜひこの機会に投資を始めてみてはいかがでしょう。