貸株金利の仕組みをわかりやすく解説〜個人投資家が知っておくべきメリットと見落としがちなポイント〜

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「貸株金利って、結局なに?」

証券会社の口座画面を見ていると、

ときどき目に入る言葉があります。

「貸株金利」

  • 株を貸すだけで金利がもらえる
  • 保有したまま収益アップ
  • 自動でやってくれる

ぱっと見た印象は、かなり良い。

「やらない理由がない仕組み」に見える人も多いはずです。

一方で、

  • なんとなくよく分からない
  • 面倒そう
  • 本当に安全なのか不安

と感じて、

設定を触らないままにしている人も少なくありません。

この記事では、

貸株金利について「やる・やらない」を急いで決めるのではなく、

👉 まず仕組みをきちんと理解すること

を目的に話を進めます。


貸株金利とは何か(超基本)

貸株金利とは、

自分が保有している株を、証券会社を通じて他の投資家に貸し出し、

その対価として受け取る金利のことです。

流れを簡単にすると、こうなります。

  1. 投資家が株を保有している
  2. 証券会社がその株を借りる
  3. 証券会社が別の投資家に貸す
  4. その見返りとして金利が支払われる

重要なのは、

株を売るわけではないという点です。

多くの証券会社では、

  • 株は口座に残ったまま
  • 評価額もそのまま表示される

ため、「普段と何も変わらない」ように見えます。

ここが、

貸株金利が分かりにくい理由の一つです。


株を貸すと、何がどう変わるのか

貸株中、株の扱いはどうなるのか。

ポイントは、

名義上の株主が一時的に借り手側に移るという点です。

その結果、

  • 株主としての立場
  • 権利の扱い

が、通常保有とは異なるケースが出てきます。

ただしこの段階では、

「デメリットだ」と決めつける必要はありません。

まずは、

「普段の株保有とは同じではない」

という事実だけを押さえておけば十分です。


なぜ株を借りたい人がいるのか

ここで自然に湧く疑問があります。

そもそも、

なぜわざわざ株を借りたい人がいるのか?

理由はいくつかありますが、

代表的なのは次の2つです。


① 空売りのため

最も多い理由が、空売りです。

空売りとは、

  • 株価が下がると予想
  • 株を借りて市場で売る
  • 後で安く買い戻して返す

という取引です。

このとき、

売るための株をどこかから借りる必要があります。

つまり、

貸株に出された株は、空売りに使われる可能性がある

ということになります。

この事実自体に、

善悪はありません。

ただ、

👉 自分が貸した株が、

👉 どのような取引に使われうるのか

を知っておくことは大切です。


② 決済・制度上の理由

もう一つは、

  • 決済の一時的な不足
  • 制度上の株の受け渡し

といったテクニカルな理由です。

ただし実務上、

貸株需要の多くは空売り関連と考えられています。


貸株金利はどうやって決まるのか

貸株金利は、固定ではありません。

次の要素によって変動します。

  • 空売りの需要
  • 株の流動性
  • 市場での人気・需給

たとえば、

  • 空売りしたい人が多い
  • 市場に出回る株数が少ない

こうした株は、

貸株金利が高くなりやすい

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これは2025年12月現在のマネックス証券の貸株金利の表です。

高いものは年利10%を超えるものもあります。

逆に、

  • 大型株
  • 流動性が高い株

は、

貸株金利が低くなる傾向があります。

ここで重要なのは、

👉 金利が高い=魅力的な株、とは限らない

という点です。

貸株金利は、

企業の成長性や財務健全性とは、直接関係しません。


一見メリットに見えるポイント

ここまで読むと、

それでもこう思う人もいるはずです。

とはいえ、

株を持ったまま金利がもらえるなら、

悪くないのでは?

確かに、

貸株金利には次のようなメリットがあります。

  • 株を売らなくても収益が出る
  • 特別な操作をしなくていい
  • 「何もしない副収入」に見える

この時点では、

魅力的に感じるのは自然です。

ただし、

ここから先は視点を少し変える必要があります。


株主の立場で見たときに起きる変化

貸株をすると、

  • 株を「持っている感覚」は変わらない
  • しかし、株主としての立場は少し変わる

というズレが生まれます。

たとえば、

  • 議決権
  • 株主総会
  • 権利確定日前後の扱い

など、

長期保有を前提にしている人ほど影響を受けやすい部分が出てきます。

このあたりから、

「思っていたより単純ではないかもしれない」

と感じ始める人も多いでしょう。


配当・税金・実務面で見えてくる現実

貸株を検討するうえで、

多くの人が見落としがちなのが配当と税金の扱いです。

貸株中に配当が出た場合、

受け取るのは「配当金」ではなく

配当相当額になるケースがあります。

この違いは小さく見えて、実務では重要です。

  • 税制の扱いが異なる
  • 場合によっては確定申告が必要
  • NISA口座では特に注意が必要

金利は自動でもらえる一方で、

管理や理解は自己責任

ここで初めて、

「思ったよりシンプルではない」と感じる人も多いはずです。


リスクとリターンを並べて考えてみる

ここで一度、

貸株金利のリターンとリスクを

感情抜きで並べてみます。

リターン側

  • 年率0.1%〜1%程度が一般的
  • 高くても数%レベル
  • 株価に比べるとインパクトは小さい

リスク・負担側

  • 株価下落リスクはそのまま
  • 株主権利の制限
  • 税務・制度の複雑化
  • 制度変更リスク

つまり、

👉 取っているリスクは減らないのに、

上乗せされるリターンは小さい

という構造です。


長期投資・高配当投資との相性

もしあなたが、

  • 長期保有
  • 高配当狙い
  • NISA中心の運用(そもそもNISA口座では出来ない場合が多いです)

をしているなら、

このズレはより大きくなります。

長期投資では、

  • 権利をきちんと持つ
  • 税務をシンプルにする
  • 余計な判断を減らす

こと自体が、

パフォーマンスの一部だからです。

貸株は、

投資そのものより「管理」を増やす行為とも言えます。


心理学的に見る「貸株が魅力的に見える理由」

それでも貸株が魅力的に見えるのは、

人間の心理が関係しています。

  • 何もしないで得したい
  • 機会損失を避けたい
  • 使っていないものがもったいない

これらは自然な感情です。

心理学では、

が組み合わさると、

小さな利益を過大評価しやすくなることが知られています。

貸株金利は、

まさにこのツボを突く仕組みです。


向いている人・向いていない人を整理する

ここまでを踏まえると、

貸株が向いている人・向いていない人が見えてきます。

比較的向いている可能性がある人

  • 短期売買が中心
  • 株主権利を重視しない
  • 税務・制度を理解している

向いていない人が多い層

  • 長期投資家
  • 高配当投資家
  • NISA中心の運用
  • 「ほったらかし」で増やしたい人

ここで、多くの個人投資家は

後者に当てはまるはずです。


結論|個人投資家にはおすすめしにくい

ここまで仕組みを整理してきたうえで、

結論を述べます。

貸株金利は、

多くの個人投資家にとっておすすめできる仕組みではありません。

理由はシンプルです。

  • リターンが小さい
  • 管理と理解のコストがかかる
  • 投資方針とズレやすい

特に長期投資では、

やらないことで得られる安定性の価値は大きい。


まとめ|「増やす」より「余計なことをしない」

投資では、

  • 何をやるか
  • 何をやらないか

この2つが同じくらい重要です。

貸株金利は、

  • 小さな上乗せに見えて
  • 思った以上に複雑

な仕組みです。

👉 個人投資家にとっての最適解は、

シンプルな運用を続けること

余計なことをしない。

これも立派な投資判断です。

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