🌏 格差の歴史──資本主義は格差を生むのか

Image


「格差=資本主義の悪」と考えると、話を見誤る

ニュースやSNSでは、こんな言葉をよく見かけます。

「資本主義は格差を広げる悪いシステムだ」

「お金持ちだけが得をする社会になっている」

たしかに、現代の先進国では

・上位数%が資産の多くを持つ

・株や不動産を持つ人と持たない人の差が拡大している

といったデータがあります。

しかし、ここで一つ立ち止まりたいポイントがあります。

格差って、本当に“資本主義から”始まったのか?

実は、答えは「NO」に近い。

人類史をさかのぼると、農耕が始まった瞬間から、格差は着実に広がり始めていたのです。

そしてもう一つ重要なのは、

格差が“縮む”タイミングは、だいたい社会にとってものすごくしんどいイベントのとき

ということ。

政権が崩壊するとき、大規模な疫病が広がったとき、戦争や反乱が起きたとき──

このタイミングで「強制リセット」がかかる歴史パターンが繰り返されています。

そこに、現代特有の要素として

  • 投資をしている人
  • 投資をしていない人

の間で、新たな格差が広がっている構図が加わってきます。


狩猟採集時代は「ほぼフラット」だった

まず、人類のかなり長い期間を占める 狩猟採集社会 から見てみます。

この時代の特徴はざっくりいうと、

  • 大きな蓄えを持てない(腐る・持ち運べない)
  • 集団で移動するため、ひとりだけ極端に持つ意味がない
  • 役割分担はあっても、固定された身分は弱い

つまり、

そもそも「貯める」ことが難しいので、格差も生まれにくい

という構造でした。

もちろん、カリスマ性のあるリーダーや狩りが上手い人は尊敬されますが、

「貴族 vs 農民」のような、固定化された階級はまだありません。


農耕革命:「余剰」が生まれた瞬間、格差も生まれた

状況が大きく変わるのは、農耕が始まってからです。

  • 土地を耕す
  • 収穫して貯蔵できる
  • 家や倉庫を建て定住する

この「余剰生産」と「私有財産」が生まれた瞬間から、

「たくさん持つ人」と「そうでない人」の差がはっきり生まれる

ようになります。

さらに、

  • 余剰を管理する人(支配層・地主・宗教エリート)
  • 実際に体を動かす人(農民・労働者)

という分業と身分差が固定化されていきました。

ここで大事なのは、

格差の出発点は“資本主義”ではなく、“農耕+余剰”の時代にある

という視点です。

資本主義は、その格差構造の上に「市場経済」と「金融」をかぶせたバージョンアップ版とも言えます。


格差はなぜ“自然に縮まらない”のか?

歴史を振り返ると、いったん広がった格差は 放っておいても勝手には縮まりません。

理由はシンプルです。

  • お金や土地を持つ人ほど、さらに有利な条件で増やせる
  • 権力を持つ人ほど、自分に有利なルールを作りやすい

つまり、

「持つ者はますます持ち、持たざる者は取り残される」構造になりやすい

ということです。

では、そんな格差が“ガツン”と縮むのはどんなときか?

歴史の教科書でもおなじみの、あまり嬉しくないイベントが出てきます。


格差をリセットしてきた3つの“ショック”

① 政権崩壊・革命

  • 王朝が倒れる
  • 貴族階級が没落する
  • 土地や富が没収される

こうした「政権の終わり」は、しばしば財産の再分配につながりました。

ただし、これは同時に、

  • 戦争
  • 粛清
  • 政治的混乱

などを伴うため、庶民にとっても非常に厳しい時期になります。


② 大規模な疫病(ペスト・パンデミックなど)

中世ヨーロッパの黒死病(ペスト)は象徴的な例です。

  • 多くの労働者が失われる
  • 働き手が減る → 残った人の労働価値が急上昇
  • 地主が「働いてくれる人」を確保するために条件を緩める

結果として、

一部地域では、農民や都市の労働者の待遇が改善し、格差が一部縮まった

という分析もあります。

しかしこれは、

「ものすごい犠牲とセットの格差是正」

であり、決して歓迎できる形ではありません。


③ 戦争・大規模な反乱

戦争や大規模な反乱も、格差を壊すイベントとして繰り返し登場します。

  • インフラや資産そのものが破壊される
  • 貴族・資本家の財産も吹き飛ぶ
  • 戦後の復興過程で「新しい分配のルール」が作られる

20世紀で言えば、世界大戦後の再配分や福祉国家の形成がこれに近い流れです。


「格差をなくす=社会に大きなダメージ」になりやすいという皮肉

ここまで見てきた通り、

  • 革命
  • 疫病
  • 戦争

などが格差をリセットしてきましたが、

どれも「できれば経験したくない」イベントばかりです。

言い換えると、

平和で安定している社会ほど、むしろ格差は“残りやすい”

という皮肉な構造があります。

だから現代社会では、

  • 税制
  • 社会保障
  • 教育機会
  • 最低賃金

などの「ソフトな調整」で格差をマイルドにしようとしているわけです。


資本主義は格差を生むのか?──答えは「仕組み上、そうなりやすい」

では、改めて本題。

資本主義は格差を生むのか?

結論に近いニュアンスで言うと、

“放っておくと”資本主義は格差を生みやすい

と考えるのが現実的です。

理由はシンプルで、

  • 資本(お金・株・不動産など)を持つ人
  • 労働力だけを提供する人

のあいだに、「リターンの性質の違い」があるからです。

資本には

  • 配当
  • 利子
  • 値上がり益

という “寝ていても増える要素” があり、

労働は、働いた時間に対してしか報酬が発生しません。

長期で見ると、

資本からのリターン(r)が、経済成長率(g)を上回りがち

という議論(ピケティなど)もあり、

資本を持っている人と持っていない人の差は、時間とともに広がりやすい構造です。


現代の格差:「投資しているかどうか」で分かれ始めている

ここに、現代特有のポイントとして

投資をしているかどうかで格差が広がっている

という問題が加わります。

  • 給与所得だけの人
  • 給与+投資(株・投信・不動産)を持っている人

この両者では、長期でみると「資産カーブ」に大きな差が付きやすい。

たとえば、

  • 毎月3万円を投資している人
  • 毎月3万円を消費に回している人

20年後には、「同じ年収」でも資産額は数百万円〜1000万円以上の差になってもおかしくありません。

しかも、現代は

  • ネット証券でワンクリックで投資できる
  • 積立NISA・iDeCoなど税制優遇もある
  • インデックス投資など、初心者でも使いやすいツールが揃っている

つまり、

制度的には“投資で資産形成しやすい時代”なのに、行動格差によって資産格差が広がっている

という状態です。

  • 暴落時に何もしない
  • コツコツ積み立てる
  • 長期で市場に居続ける

といった行動ができる人と、

不安で何も始めない(あるいは短期でやめてしまう)人とのあいだで、

「複利」という静かな格差拡大メカニズム が働き続けます。

内部リンク例:

➡ 暴落時にやるべき行動は“何もしない”が正解|長期投資家が暴落で勝つための心理学×投資戦略

➡ 複利は時間がすべて──資産形成における“遅れてきたスタート”を取り戻す考え方


「格差をなくす」は非現実的、「格差とどう付き合うか」が現実的

ここまで見てきたように、

  • 人類史レベルで格差はずっと存在してきた
  • 農耕の時点で構造的な格差は始まっていた
  • 資本主義は“格差を加速させやすい”が、その代わり成長と豊かさも生んだ
  • 格差が急に縮むのは、大きなショック(戦争・疫病・革命など)のときになりがち
  • 現代では「投資をしているかどうか」が静かに格差を広げている

といった構図があります。

となると、現実的な問いは

「格差をゼロにできるか?」ではなく、

「自分はこの構造とどう付き合うか?」

に変わってきます。


個人レベルでできる「格差構造との付き合い方」

最後に、資本主義と格差の歴史を踏まえた上で、

個人が取りうる選択肢 をいくつか整理しておきます。

  • 投資を「持つ側」のルールとして理解し、少額からでも参加する
  • 自分の「人的資本(スキル・経験)」を上げて、収入の土台を強くする
    • 資格
    • 専門性
    • 副業・複業
  • 格差に対する“感情”だけでなく、“構造”で見る目を持つ
    • 「お金持ちがずるい」ではなく、 「なぜそうなったのか、どんな仕組みがあるのか」に興味を向ける
  • 歴史的に見て「無理のない範囲で参加する」ことを選ぶ
    • 極端にレバレッジをかけない
    • 自分のメンタルが耐えられるリスク水準にとどめる

格差の歴史を学ぶことは、

「世の中の不公平を嘆くため」ではなく、

“ルールを理解したうえで、自分の一手をどう打つか”を考えるため


まとめ:格差の歴史は「絶望の物語」ではなく、「構造を理解するための教科書」

  • 格差は資本主義になってから生まれたわけではなく、農耕と余剰から始まっていた
  • いったん広がった格差は自然には縮まらず、政権崩壊・疫病・戦争・反乱のような“ショック”でリセットされてきた
  • 資本主義は格差を生みやすいが、その一方で個人が「資本側」に回るチャンスも同時に与えている
  • 現代では「投資しているかどうか」が、新たな格差の分かれ目になっている
  • 大切なのは、「格差はけしからん」で止めるのではなく、構造を理解し、自分の行動レベルに落とし込むこと

あなたはこの歴史の流れの中で、

どのようなポジションを取りたいでしょうか?

  • 投資を通じて、静かに「資本の側」に足をかけるのか
  • まずは生活防衛とスキルアップから整えるのか
  • 心理学や歴史の視点から、感情に振り回されずに判断する力を鍛えるのか

どれを選ぶにしても、「知っているかどうか」で結果は大きく変わります。

その第一歩として、「格差の歴史」を押さえておくことは、かなりコスパの良い自己投資だと思います。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA