日本では中学生の26人に1人、高校生の33人に1人が家族の介護や世話を担う「ヤングケアラー」です。
しかし彼らが背負うのは家族のケアだけではありません。心の負担、進学やキャリアの制約、お金の問題、そして社会の理解不足が複雑に絡み合っています。ここでは、それぞれの課題を具体例とともに深掘りします。
心理的影響:孤立感と自己肯定感の低下
ヤングケアラーは、放課後に友達と遊ぶ代わりに、祖父母の食事を作り、兄弟をお風呂に入れます。
一見「しっかりした子」に見えますが、孤立感や自己肯定感の低下という大きな影響が隠れています。
例:「今日はカラオケ行こう!」と誘われても、
「ごめん、家のことがあるから…」と断り続けるうちに誘われなくなった
心理学では、孤立が続くと抑うつ症状や不安障害のリスクが高まるといわれています(参考:厚生労働省「ヤングケアラーの実態調査」)。
さらに「自分がいないと家族が困る」という思いから、自分の感情を抑え込む癖がつき、大人になっても人間関係で過剰に相手に合わせてしまう“共依存体質”になることも。
進学・キャリアへの影響:夢を諦める若者たち
ヤングケアラーの多くは、勉強時間を確保できない状況にあります。
宿題をやる前に、家事や介護でヘトヘト。進学したくても学力が追いつかず、進学を断念するケースも。
例:大学進学を夢見ていたAさん(高校3年生)は、放課後に母親の介護と弟の世話をしながらアルバイト。
結果、受験勉強に集中できず進学を諦め、卒業後はフルタイム勤務を選択。
こうした状況はキャリア形成にも影響します。学歴や経験が限られることで、希望する職種に就きにくくなり、将来的な収入にも差が生まれるのです。
お金の問題:家計を支える10代
ヤングケアラー家庭では、介護費用や医療費が家計を圧迫することが多く、子どもがアルバイトで家計を支えるケースもあります。
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医療費や介護サービスの自己負担
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片親家庭では収入源が限られる
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子ども自身が学費や生活費を稼ぐ
実際、ある高校生は「学費を払うために週5でバイトしている。勉強よりまず家計を守ることが優先」と語っています。
経済的支援としては、児童扶養手当、介護保険サービス、生活福祉資金などがありますが、制度を知らずに利用できていない家庭も多いのが現状です。
👉 厚生労働省の支援策一覧はこちら:https://www.mhlw.go.jp/
学校・職場での理解を広げるには
ヤングケアラー問題を解決するためには、学校や社会全体の理解が不可欠です。
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学校でできること
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教員がケア負担のサインを見抜く(遅刻、欠席の増加、集中力の低下)
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保健室やスクールカウンセラーで相談できる環境を整備
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地域や職場でできること
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自治体やNPOが居場所づくり(学習支援・交流会)
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企業のCSR活動として奨学金やインターン支援
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例:ある自治体では、ヤングケアラーの集まりを定期開催し、子ども同士が悩みを共有。
「初めて同じ立場の子と話せた」「私だけじゃないと思えた」と参加者の声が寄せられています。
まとめ:支える社会を一緒に作る
ヤングケアラーは、ただの「家庭の手伝いをしている子」ではありません。
心理的負担、学業・キャリアへの制約、経済的プレッシャー、社会の理解不足という複数の課題を同時に抱えています。
私たち大人ができるのは、
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まず存在を知ること
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声をかけ、相談できる場を用意すること
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制度や支援を積極的に広めること
一人でも多くの子どもが「介護か勉強か」の二択に苦しまない社会を目指して、知識と理解を広げていきましょう。