こんにちは、COBARUです。
「勉強してもすぐ忘れる」「昨日覚えた英単語がもう思い出せない」──
誰もが経験するこの“忘却”には、明確な法則があります。
それが、心理学者ヘルマン・エビングハウスによって発見された
「忘却曲線(Ebbinghaus Forgetting Curve)」。
この記事では、忘却曲線の仕組み・実験結果・現代への応用を
心理学・脳科学・行動経済学の視点からわかりやすく解説します。
💡 エビングハウスの忘却曲線とは?
エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)は、19世紀ドイツの心理学者。
人間の記憶がどのように失われていくのかを初めて科学的に測定した人物です。
彼は、自らを被験者として無意味な音節(例:WID・KAF・RULなど)を大量に暗記し、
時間経過とともに「どれくらい忘れるか」を記録しました。
その結果、次のような驚くべきカーブが描かれました👇
📉 忘却のスピード(エビングハウスの実験結果)
| 経過時間 | 記憶保持率(おおよそ) |
|---|---|
| 20分後 | 約58%保持(42%忘却) |
| 1時間後 | 約44%保持(56%忘却) |
| 1日後 | 約33%保持(67%忘却) |
| 1週間後 | 約25%保持(75%忘却) |
| 1か月後 | 約21%保持(79%忘却) |
つまり、人間の脳は1日で7割近くを忘れるのです。
これは意志の弱さでも、頭の悪さでもなく、
脳がもともと「忘れるようにできている」からです。
🧠 なぜ人間は忘れるのか?──脳の“情報整理”メカニズム
エビングハウスが発見したのは、“脳は常に情報を捨て続けている”という事実。
その理由は、生き残るために必要な情報を優先するため。
もし昨日の夕食の皿の並び順まで全部覚えていたら、脳はパンクします。
つまり、忘却とは「記憶喪失」ではなく「情報の最適化」です。
🧩 忘れる理由3つ
- 脳の省エネ機能(エネルギー節約) → 不要情報を削除し、必要な記憶を優先保存。
- 新しい情報の上書き(干渉) → 次々と入る刺激が、古い記憶を押し出す。
- 感情のフィルター → 感情を伴わない情報は、重要度が低いと判断され、早く忘れられる。
この3つのメカニズムが、あなたの「勉強したのに覚えてない!」の正体です。
📚 忘れにくくするには?──“復習タイミング”の科学
では、どうすれば忘れにくくなるのでしょうか?
答えは、「忘れる前に思い出す」こと。
エビングハウスの研究では、復習を繰り返すと忘却曲線がゆるやかになることも示されています。
🔁 記憶を定着させる最適な復習タイミング(実践例)
| 復習回数 | タイミング | 効果 |
|---|---|---|
| 1回目 | 学習後24時間以内 | 記憶の再固定を促す |
| 2回目 | 1日後 | 記憶を短期から中期記憶へ |
| 3回目 | 1週間後 | 記憶が安定化し始める |
| 4回目 | 2〜3週間後 | 忘却の加速を防ぐ |
| 5回目 | 1か月後 | 長期記憶化される |
この「間隔をあけた復習法」は**“間隔反復(Spaced Repetition)”**と呼ばれ、
今でも教育・脳科学分野で高く評価されています。
🔬 現代版:忘却曲線を応用したツールと方法
近年では、エビングハウスの理論をもとにした記憶アプリや学習法も数多く登場しています。
🧩 代表的なツール
- Anki(アンキ):間隔反復アルゴリズムを自動で計算して出題。
- Quizlet / Studyplus:反復頻度を管理できる学習支援アプリ。
- Notion+AIリマインダー:学習ログに基づいて復習タイミングを提示。
こうしたツールは、忘却曲線の理論を“自動化”してくれるため、
人間がタイミングを覚える必要がありません。
🎯 記憶を強化するための4つの実践テクニック
① アウトプット前提で勉強する
人は「教えるつもりで学ぶ」と、記憶定着率が3倍になると言われています。
これは“プロテジェ効果”と呼ばれる現象。
学んだことをノートやSNSで発信するのも有効です。
② 感情を動かす
感情が伴った記憶は“アドレナリン”の働きで強く残ります。
数字よりストーリー、暗記より実体験の方が忘れにくいのはこのためです。
💡例:
「会社のプレゼンで失敗した英単語」は一生忘れないですよね。
③ 五感を使う
音読・図解・手書き・話す──
記憶は“マルチモーダル(多感覚)”に学ぶほど定着しやすくなります。
たとえば、
- 音で覚える(リスニング)
- 視覚で覚える(図やイメージ)
- 手で書く(運動記憶) この3つを組み合わせるだけで、記憶保持率は2倍以上に跳ね上がります。
④ 「思い出す努力」をする(想起練習)
ただ読むだけより、**“思い出す努力”**をしたほうが記憶は長持ちします。
これは「テスト効果」と呼ばれ、
“テストを受けること自体が学習効果を高める”という心理学実験でも証明済みです。
🧭 忘却を前提にした「戦略的勉強法」
多くの人は「忘れないように」勉強しますが、
本当に大事なのは「忘れることを前提に設計する」ことです。
勉強のゴールは「覚えること」ではなく、「必要な時に思い出せること」。
そのためには、次の3ステップを意識しましょう👇
1️⃣ 忘れる前に復習する(24時間以内)
2️⃣ 定期的に思い出す(1日・1週・1か月)
3️⃣ 脳に“使う機会”を与える(アウトプット)
🧩 行動経済学で見る“復習の継続を阻む心理”
「わかってるけど続かない…」という人も多いですよね。
これは**“現在バイアス”**と呼ばれる心理トラップです。
人は「今の快楽」を優先し、「将来の利益」を軽視する。
勉強も同じで、今すぐ成果が出ないと続けにくい。
しかし、エビングハウスの理論を理解すれば、
「今やることが1か月後の自分を助ける」と実感できるようになります。
🧠 記憶とは「鍛える筋肉」である
| 状況 | 多くの人の反応 | 科学的な理解 |
|---|---|---|
| すぐ忘れる | 才能がない | 脳の最適化機能 |
| 復習が面倒 | やる気の問題 | 忘却曲線の自然現象 |
| 繰り返すのが大変 | 時間のムダ | 定着率を上げる投資 |
エビングハウスの忘却曲線を知ることで、
「なぜ忘れるのか」が“敵”ではなく“味方”になります。
忘れることは、成長の一部。
そして、思い出すたびに脳は強くなる。
📘 「忘れる」は失敗ではなく、“記憶の筋トレ”。
大切なのは、忘れる前にもう一度思い出すこと。
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