🧠 はじめに:「やっぱり下がると思ってた」と思うのはなぜ?
株価が下がったあとで「やっぱり落ちると思ってた」と感じたことはありませんか?
また、含み損が出ている銘柄を「もう少し待てば戻る」と信じて手放せなかった経験はないでしょうか。
これらの心理の裏には、後知恵バイアス と 保有効果(エンダウメント効果) という
行動経済学的な“錯覚”が隠れています。
本記事では、これら2つの心理を投資の視点からわかりやすく解説し、
感情に流されない投資判断 をするためのヒントをお伝えします。
💡 後知恵バイアスとは?「最初から分かっていた」と思う脳の錯覚
🧩 定義と背景
後知恵バイアス(Hindsight Bias) とは、
「結果が分かったあとに、その結果を予測していたと錯覚する」心理現象です。
1975年に心理学者フィッシュホフが提唱し、
「人は結果を知ると、それが“当然の結果”のように感じる」ことを実証しました。
たとえば──
- 株価が暴落したあと「やっぱり危なかった」と思う
- 上昇した銘柄を見て「買っとけばよかった」と感じる
これらは、事後的に情報を“再構築”して記憶を塗り替えている状態なのです。
💬 投資で起こる「後知恵バイアス」の具体例
1️⃣ 投資判断の失敗を“正当化”してしまう
→「最初から危ないと思ってた」ことで、自分の判断ミスを認めずに済ませる。
2️⃣ 過去の成功体験を過大評価する
→「あの時の判断は正しかった」と思い込み、次も同じ戦略を繰り返す。
3️⃣ 学びが深まらない
→ 「結果論」で処理してしまうため、冷静な分析ができず、改善が止まる。
🧭 対策:記録することで“思考の癖”を可視化する
後知恵バイアスを防ぐ最も効果的な方法は、
「投資の記録」を残すこと です。
- なぜ買ったのか
- いつ、どんな根拠で判断したのか
- どんな不安や期待を感じていたか
これらをメモやエクセルに残すだけで、
「当時の自分の考え」と「今の結果」を切り離して分析できるようになります。
つまり、“記憶”ではなく“データ”で振り返ることが、後知恵バイアスの最大の防御策です。
💰 保有効果(エンダウメント効果)とは?「自分の資産」を過大評価する心理
🧩 定義と由来
保有効果(Endowment Effect) とは、
「自分が所有しているものを、実際より高く評価してしまう」心理現象です。
1980年代にリチャード・セイラー(行動経済学の父)が発見し、
ノーベル経済学賞にもつながった重要な概念です。
💬 投資でよくある保有効果の例
1️⃣ 含み損の株を売れない
→「自分が選んだ銘柄だからきっと戻る」と信じてしまう。
2️⃣ 利益が出るとすぐ売ってしまう
→「自分の選択が正しかった」と早く確定したくなる。
3️⃣ “買値”を基準に判断してしまう
→ 市場価値ではなく、自分が買った価格に固執してしまう。
このように、自分の所有物=価値があるもの と錯覚するのが保有効果の本質です。
🧭 対策:客観的な基準を持つ「ルール投資」
保有効果に打ち勝つためには、
**「感情ではなくルールで判断する」**仕組みを作ることが重要です。
例:
- 損切りラインを“購入価格から◯%下落”と自動で決める
- 売却条件を「目標リターンに達したら」など明文化する
- 他人(家族・FP)に相談して“外部の視点”を入れる
感情を完全に消すことはできませんが、
ルール化=感情の影響を減らす仕組みです。
🧩 行動経済学が示す「投資の失敗パターン」
後知恵バイアスと保有効果を併せてみると、
多くの投資家が陥る失敗パターンが見えてきます👇
| パターン | 原因となる心理 | 典型的な行動 |
|---|---|---|
| 判断の正当化 | 後知恵バイアス | 「やっぱり分かってた」と過信する |
| 含み損の放置 | 保有効果 | 「自分が選んだ株だから大丈夫」と信じる |
| 改善の遅れ | 両方の複合 | 結果だけで判断し、次の戦略に活かせない |
🧠 心理を知ることは「武器」になる
投資の成功者は、特別な才能 があるわけではありません。
彼らが他の投資家と違うのは、自分の心理的バイアスを理解していることです。
「自分の脳は間違える」と認めることが、
冷静な投資判断の第一歩になります。
🧭 まとめ|感情を理解すれば、投資はもっと上手くいく
| 心理効果 | 投資での影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 後知恵バイアス | 結果論で判断が歪む | 投資記録を残す |
| 保有効果 | 含み損を抱え続ける | ルール化・損切り基準 |
投資は「感情との戦い」です。
しかし、その感情を敵にする必要はありません。
むしろ、「自分の心理を味方にする」ことができれば、
相場の波に動じず、長期的に安定したリターンを得られるようになります。
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