🧠 “自分は正しい”と思い込む脳の罠|確証バイアスが投資判断を狂わせる心理

はじめに:なぜ人は“自分の意見”を信じたくなるのか?

投資の世界では「データで判断しよう」と言われますが、
実際には人間の脳は“感情”と“思い込み”に強く影響されるものです。

中でも代表的なのが、確証バイアス(Confirmation Bias)
これは、自分の考えや信念を裏づける情報ばかりを集め、
反対の意見を無意識に排除してしまう心理的傾向
です。

たとえば、
「この株は将来伸びる」と思い込んだ投資家が、
好材料のニュースばかり探し、悪材料を無視してしまう──
これこそが確証バイアスの典型です。


🔍 確証バイアスとは?|脳が“都合のいい情報”を選んでしまう理由

確証バイアスとは、心理学者ピーター・ワッソンの研究に端を発する概念です。
人は客観的に情報を処理しているようでいて、
実際には**「自分の考えを正しいと証明する情報」**を探しがちです。

これは脳のエネルギー効率を保つためでもあります。
つまり、自分の信じたいことに矛盾する情報を受け入れるのはストレスで、
脳はそれを“回避”しようとするのです。

たとえば次のようなケースが挙げられます。

  • 株価が下がっているのに、「一時的な調整だ」と思い込む

  • 自分の保有銘柄の悪いニュースを“ノイズ扱い”する

  • SNSで、自分と同じ意見の投稿ばかりを追う

このように、人は自分の信念を守るために、無意識に情報を選別しています。


💸 投資で確証バイアスがもたらす“3つの落とし穴”

投資判断の中で、確証バイアスは大きな損失要因になり得ます。
ここでは代表的な3つの落とし穴を紹介します。


① 含み損を「まだ戻る」と思い続けて損切りできない

多くの投資家が経験する「塩漬け」状態。
それは単なる根性ではなく、確証バイアスによる「希望的解釈」が原因です。

自分が選んだ銘柄が間違っていたと認めるのは痛みを伴います。
だから脳は「きっと反発する」「これは一時的」と都合のよい情報だけを選び取ります。


② 成功体験にしがみつく

「過去にうまくいった投資法だから、今回もいける」
この思考も確証バイアスの典型です。

しかし市場環境は常に変化しています。
過去の勝ちパターンを“正しい”と信じ込み、柔軟な判断を失うと、
次第にパフォーマンスが落ちていく危険があります。


③ SNSやYouTubeで“都合の良い意見”だけを見る

近年は情報があふれすぎており、
「自分の意見を補強してくれる情報」だけを選ぶことが簡単になりました。

結果として、
・強気相場では「買い煽り情報」ばかりに触れ、天井で買う
・弱気相場では「暴落くる派」に同調して底で売る

──という行動が起こりやすくなります。

つまり、確証バイアスは**“情報の偏り”を通じて損失を誘発する心理トリガー**なのです。


🧩 確証バイアスを克服する3つの方法

1️⃣ 「反証情報」をあえて探す

自分の考えと逆の立場に立つ情報をあえて集める習慣をつけましょう。
たとえば、「上がる」と思っている株に対して、
“なぜ下がる可能性があるのか”という記事や分析を意識的に読む。
それだけで判断のバランスが取れるようになります。


2️⃣ 記録を残して、客観的に振り返る

投資日記やエクセルで「なぜ買ったか」「その後どうなったか」を記録すると、
思考の傾向が見えてきます。
自分の思考の“癖”を可視化することで、確証バイアスを減らすことができます。


3️⃣ データとルールで判断する

感情や勘ではなく、**「ルールベースの投資」**を行うことが重要です。
たとえば、

  • 損切りラインはマイナス10%で固定

  • 指標やトレンドに基づき、一定条件で売買

といったルールを守れば、
「自分は正しいはず」という思い込みに振り回されずに済みます。


🔍 行動経済学が教える「人間は合理的ではない」という真実

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの研究でも明らかなように、
人間は決して“合理的な経済人”ではありません。

私たちは感情・直感・経験をもとに判断し、
その後で理屈を後付けして「正しかった」と納得する傾向があります。

つまり、「自分は冷静だ」と思っている人ほど、
実は確証バイアスに支配されやすいのです。


💬 まとめ:自分の“正しさ”を疑える人が、最も強い

確証バイアスは誰にでも起こる自然な心理現象です。
しかし、その存在を理解し、対策できる人こそが、
長期的に安定した投資成果を出せる人です。

大切なのは、
「自分は間違っているかもしれない」という謙虚な思考
そして、感情や思い込みに左右されないための仕組みづくりです。


🧭 まとめ

  • 確証バイアス=自分の考えを補強する情報だけを信じる心理

  • 投資では「損切りできない」「成功体験に固執する」などの形で現れる

  • 対策は「反証情報を探す」「記録を残す」「ルール化する」

  • 最も重要なのは「自分を疑う力」

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